大判例

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大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)2356号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告が請求の原因として主張する事実(註・原告は昭和三四年六月一五日被告から高槻市大字古曾部三〇三番地の四所在木造瓦葺平家建居宅一棟を賃料一ケ月金一万円、期間昭和三六年六月一五日迄、保証金三〇万円とし明渡の際金五万円を差引いて金二五万円を返還するの約で賃借し、同日被告に対して保証金三〇万円を交付したところ、昭和四一年三月二二日右家屋を明け渡したが、右返還すべき保証金二五万円から当時の延滞損害金三ケ月分三万円を差し引いた金二二万円中、金一〇万五、〇〇〇円の返還を受けた)。は当事者間に争がない。

被告は保証金中金一一万五、〇〇〇円の未払額につき、同額の執行費用を要したとして、右費用出捐に基く損害賠償請求権で相殺した旨抗弁する。

<証拠略>によれば、原告は昭和四一年一月中に確定した右家屋を明け渡すべき旨の判決を受け、更に被告から同年二月一五日を期限として明渡の催告を受けたのに対し、移転先の建築が完成しなかつたため、家財の大部分は倉庫へ預けるなどしたものの、なお僅かばかりの生活用品を置いて居住を続けていたところ、被告の方では大阪地方裁判所執行吏に家屋明渡の強制執行を委任し、右に基き執行吏は同年三月二二日被告側で調達した人夫二人位を補助として同伴のうえ原告方に赴き、リヤカーに二台分ほど残つていた家財を運び出して約半時間で執行を終了したが、被告は右執行委任に際して相当弁護士の言に従い執行立会人と称する訴外茨卓司に執行費用ということで金一一万五、〇〇〇円を支払い、右訴外人が右金員中から執行吏に人夫料を除く金四、一〇八円を支払つた、と認められる。<証拠判断略>

右事実によれば、原告が家屋を任意に明け渡さなかつたために被告の出捐するところとなつた金員のうち、執行に要した費用とみるべきものは、執行吏に現実に支払つた金四、一〇八円のみである。その余の訴外茨卓司に支払つた金一一万八九二円は、その名目にも拘らず、執行に要した費用とみることはできない。すなわち、強制執行の実施そのものは国家機関としての執行裁判所または執行吏(現在の執行官)が自ら行い、私人による実施を全く許さないのであつて、執行に際し物の運搬をした人夫も執行吏自身が到達すべきであり、しかも執行吏の補助者に過ぎず、右人夫と私人との間に直接の雇傭その他の関係を生じるものではなく、右人夫の賃金は執行吏において支払い、その実費を執行吏から執行委任者に請求すべきである。右とは別に、執行立会人と称する法定外の私的介入者に対して直接に執行費用という名目で如何なる金員を支払つたからといつて、これを執行に要した費用に算入することは、私的な強制執行の実施を容認する結果となり、到底許されない。ところで本件の場合、執行に際して生じた人夫賃については、執行吏からその支払請求を受けたと認めるべき証拠がない。

担当弁護士の言を信じて右の如き多額の金員を無用に支出した被告の立場には同情すべき点がないでもないが、これが損失の補填は担当弁護士または私的な人夫調達を容認した執行吏との間において決済されるべきものである。

<証拠略>によれば、被告は右執行の頃原告に手渡した書面をもつて、原告に返還すべき保証金二二万円に対し執行費用という金一一万五、〇〇〇円をもつて相殺するとの意思表示をしたことが認められるが、右相殺の意思表示は執行吏に納入した金四、一〇八円の範囲で効力を生じるに過ぎない。(渡辺一弘)

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